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まじめなはなし

身近に介護問題に直面している人がいたとして、それがどれだけの大変さかというのはなかなか分からないものである。分かってあげたいという思いの反対側には、経験と理解がないという解消し難い問題がある。いずれ誰しもが通る道であろうこの問題も、現時点では理解の充足程度にとどまるほかない(これも難しいけれど)。それは仕方のないことなのだが。

というわけで、手に取ったのが『母さん、ごめん』って本。50歳の独身男性の壮絶な介護の記録だ。私自身、ずっと介護というものについて、いろいろ知りたい(理解したい)と思っていたのだと思う。食い入るように読んでいた。さてさて、肝心の中身であるが、読み進めるには、結構な労力が必要なものであった。そうなんだ、そうなんだ、と自分の中に収めていくのが苦しい。筆者がほとほと介護に疲れ、認知症の母に手をあげてしまった場面では、見ず知らずの親子の話とはいえ、涙なしには読めなかった(ドトールにて)。某音楽プロデューサーK氏の引退騒動での世論は、「フリンの是非」についてよりも「介護問題」に注目がいっていたように思う。人様の夫婦生活のことなんかよりも、社会問題について世の多くの人たちは考えさせられたのだ。個々人が意見を書き込めるニューストピックには、多くの介護経験者の経験談が散見された。その対象は、たいていが親であり、ときどき配偶者である。「“愛情”だけでは成り立たないのが、介護」「家を建てるには建築士や大工に頼むのに、なぜ介護に関してはプロに頼ることを躊躇するのか」「家族だからこそ、憎しみが生まれることがある。お金があるのなら、施設を利用して、お花を持ってお見舞いに行き、“愛してる”と伝えてあげることのほうが幸せなのかもしれない」・・・などなど印象的な書き込みから、議論は「尊厳死」や「安楽死」にまで至っていた。これから迎える「超高齢社会」への人々の不安や危惧の表れでもあると思う。この本の筆者も、最終的には、介護のプロにお願いする(施設への入居)ことになる。でも、その決断に至るまでには、なるべく家で診てあげたい、でも限界、と相当な葛藤があったようであり、それって世の介護問題に直面している人たちの大多数の意見の代弁なのかもしれないと思った。「あなたの後悔のないようにね」と、励ましのつもりでかけていた言葉は、実は残酷なものだったのではないかとハッとさせられた。あえて介護される側より、介護する側を思いたい、という気持ちがあっても、だ。そうやって、経験のないものの言葉というのは、時に思いも寄らない結果を招くことがあるから、難しいのだ。「よくここまでがんばられたと思います」ケアマネさんに掛けられた言葉で、すっと心が軽くなったと筆者は書かれていたが、そう言葉をかけてもらえる人は、きっと少ないとも思う。家族であったり、ケアマネさん(第三者のサポーター)であったりでないと、言えない言葉というのもある。経済的な問題だったり、時間的な問題だったりを把握している人たち、という意味において。では、社会で関わる人たち(私たち)は、どうサポートしたらいいのだろう?結局のところ、微々たることしか出来ることはないのであって、「介護離職をさせないこと」と「息抜きに付き合うこと」くらいしか思い浮かんでこないのだから、無力である。しかし、無力を嘆いていても、しょうがない。後者は今からでもいつでも私ひとりで出来ることとして、前者は、やはり社会全体の仕組みづくりに依存すると思う。筆者の方が言っていた「介護は事業」を実現させる、社会の取組みである。でもねー、難しいんだよね、きっとこれ。だって、産休/育休制度すら危うい会社なんてたくさんあると思うからね(うちの会社とか)。先が見える育児ですらこうなのに、終わりの見えない介護はどうでしょう?ってこと。でも介護離職は最終的な手段にしないと、それこそ共倒れになりかねない。両者にとって、不幸な結末だ。それに、個人の社会との繋がりって、個人が存在意義を見出すという意味の他、あらゆる面で結構重要だと私は思っている。「なんとか方法を考えてみましょう」そう言って安心を与えてあげられる会社にならないといけないと思う。日本の平均寿命と健康寿命には男女ともにおおよそ10年程度の差があるそうだ。要は、自分の意思で自由に体を動かせて、病気もない年齢から、あと10年間は誰かのサポートが必要になるということ。その10年間を社会が社会保障という形でサポートする、ということでもある。誰しもぴんぴんころりを望めど、多くのケース、そうはならない。もっと危機感をもって、社会全体で取り上げるべき問題なんだよね、すでに。

この本は、介護の当事者よりも、その周りにいる人たちこそ、読むべきだと感じた。当事者はみな自分の自由を我慢して、介護に取組んでいる。当事者の心が壊れてしまわないように、どう周りがサポートするかが大事。そして、今は関係なくとも、いずれ直面することになるのだから、若い人も読んで心得ておく価値は十分にある。いっそのこと、道徳の授業(なんて今もあるの?)に導入してもいいのでは、と思うほど、素晴らしい本だと思う。あと政治家さんたちね。変わりゆく日本に、ちゃんと着いていってくださいね、というところだろうか。「働いて税金を納めると言っているのに、入れる保育園がない!!」と声をあげたお母さんのあの勇気を無駄にしないでほしい。介護もまったく同じ話だ。介護の知識、経験ともに持ち合わせていない私にとっては、とても勉強になるものであった。想像以上に介護はずっとずっと大変だ。「もう十分がんばったよ」と言える立場にはいないけど、ストレスの捌け口でもそんな役割をさせてもらえたらいいな、と心から思う。

まだまだ寒さは厳しいが、今年も春は、もうそこだ。

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